藤原正彦(2006):国語教育絶対論、新潮文庫「祖国とは国語」、pp.12-45
概要
著者
- 藤原正彦/御茶の水女子大学教授
主な対象読者
- 一般
概要
- 日本人のアイデンティティーを支える国語の重要性について主張
背景・考え方
- 国語が日本人のアイデンティティーを支え、国語力の低下は国を亡ぼす
- 経済・社会ほか、日本の危機を立て直すには、国語教育の改善から手を付けるべき
ポイント
- 国語は単に情報伝達の手段ではなく、思考そのものに関わる知的活動の基礎である
- 論理的思考力と表現の技術は、国語を通して学ぶことができる
- 数学と異なり、現実世界の論理は絶対的な真偽がないため、国語に基づいた説得力のある表現が重要
- 情緒は、貧困・懐かしさ・もののあわれ・美観・武士道精神・祖国愛などで、わが国が有する普遍的価値であり、それは国語から培われる
- 祖国とは「血」や「国土」ではなく、文化・伝統・情緒を培う「国語」なのである
複数のコラム的な文章を集めて一冊の書籍にしている。
その中の一つが「国語教育絶対論」という文章である。
著者は数学者でありながら、国語教育や情緒の重要性を説いているところが面白い。
本のタイトルである「祖国とは国語」の意味は、民族のアイデンティティーは母国語にあるということである。
日本人の情緒、思考、大局観は、国語(日本語)をベースに形成されており、国語教育を疎かにしていることが、日本の社会、経済の危機を招いていると述べている。
また、数学の論理と異なり、現実世界を記述するのは国語(言語)であり、国語による表現を身に着けることが、論理的思考力を学ぶことにつながるという点は参考になった。
我々の母国語である国語(日本語)の重要性を確認できる本である。
(以上)