今井むつみ(2016):学びとは何か -〈探求人〉になるために、岩波新書1596

概要

著者
  • 今井むつみ/慶應義塾大学教授
主な対象読者
  • 一般
概要
  • 認知科学の視点から、学びの仕組みと学びが深まる過程について解説
背景・考え方
  • 学習の仕組みや、物事に熟達した「達人」に至るまでの過程を理解すること、知識についての認識(エピステモロジー)を正しくもつことが、よりよい教育につながる
  • よい学びのための最善の方法を考え実践する「学びの探求人」になるヒントを提供したい
ポイント
  • 人は物事を断片的・客観的に記憶することが難しく、「スキーマ(行間を補う常識的な知識)」により、自分なりに意味付けをして記憶する
  • スキーマは経験的に作られ、誤った場合には修正されていくことで、生きた「知識システム」が形成されていく(子供の母語学習は、思い込みでスキーマを作り、適宜修正しながら語彙システムを更新していく)
  • 直観」による素早い判断と、「熟慮(批判的・科学的思考)」による修正で、精緻な知識システムへと成長する
  • 学習し熟達するには、「模倣から始めて身体を使って繰り返す」ことが重要

本書は、認知科学の視点から、人が学習する仕組みについて、わかりやすく解説している。

小さな子どもが母国語を覚える過程を例に、スキーマの形成・修正と知識システムの更新により、「生きた知識」になっていく仕組みが説明されている。

自在に使える知識を形成するには、知識の積み重ねではなく、新しい知識が既知の知識とどのように関係しているか自分で見つけ、納得し、単なる足し算以上の知見を新しく形成していくことと理解した。

これは、著者がいうように「主体的な学び」の本来の姿に外ならない。

チェスでもスポーツでも卓越したプレーヤーは、一人での練習に多くの時間を費やすという。

教科の学習でも同じであり、自分で主体的に取り組み、考え、発見し、理解を深め、知識が相互に結び付き、学力全般が向上していくのだと思う。

(以上)