入江伸(1978):奇跡の国語、祥伝社ノン・ブック134
概要
著者
- 入江伸/入江塾塾長
主な対象読者
- 主に中学生、高校生
概要
- 国語学習の意義と「読む・聞く・書く」の側面からの学習法について解説
背景・考え方
- 国語教育の目的は、日本の風土・文化を誇れる心情を持つ日本人を育てること
- 日本の風土、日本人の季節感・生活感を抜きにして国語の十分な理解はできない
- 文章を残した先人と同じ立場(生活感情、処世感)に立つ努力が国語学習の根源
ポイント
- 入試の国語で試されるのは、末梢的な知識でなく、作者と同じ立場に身を置き、虚心に文章を読む能力であり、それが本当の読解力
- 文章は細切れでなく、全体の流れを素直に受けとめて読み取る
- 文章の理解と豊かな鑑賞には「連想背景」が必要で、それは日々の体験や読書から、積極的・主体的に自然や人生を見つめることで得られる
- 乱読・速読により、言葉を知り、自身の 「想」(考え)を作り、それを発展させて、「内省」(自ら自分を振り返り、静かに考えること)を深めることが重要
- 音読・暗誦による文章のリズム感が「読み」をリードし、読解力向上に役立つ
- 短文練習・書き写し・要約文・感想文により、言葉に敏感になり、論理性が養われる
- 日々思うことを書く習慣により内省を深めると、自分の文章が書けるようになる
著者は、大阪で有名であった「入江塾」の塾長・経営者である。
主に中学生を指導し、灘高校を中心とするトップ校に多くの合格者を出す有名な塾であった。
勉強法、受験論に関して、多くの著書を執筆されている。
私(このWebサイトの筆者)が中学生のころ、他の教科に比べ国語には自信がなく、勉強方法もよくわからなかった。
そのような中、国語の勉強法についての本書を知り、感銘を受けた覚えがある。
中でも、新聞コラムの「書き写し」や「床中ノート」(寝床に入ってから思うことをノートに書くこと)という学習法はためになった。
書き写し練習により、国語力や作文力が向上し、併せて他の科目の成績も向上した。
おそらく、国語力の向上により基礎学力が上がり、それにより学力全般が向上したのだと思った。
単なるテクニック解説ではなく、国語の勉強についての本質を述べた本である。
現代文だけでなく、古文や漢文の勉強法についても書かれており、参考になることが多い。
このサイトで提案する「国語力強化プログラム」の発案は、この書籍から学んだ経験を基にしている。
ただ残念ながら、本書の出版は50年近く前とたいへん古く、今は絶版になっている。
最後に、特に気づいた点について記しておく。
- 文章の理解には、日々の体験や読書から、自分の中に「連想背景」を作ることが重要と述べられている。この「連想背景」は著者のオリジナルな言葉と思われるが、認知心理学でいうところの 「スキーマ」のことを言っているのではないかと思った。「スキーマ」とは、行間を補う常識的な知識のことをいう(今井, 2016)。
- また、 自分の中に「想」を作り、「内省」に発展 させることが、国語の学習、文章読解には必要だと述べられている。国語の理解、文章の理解には、テクニックや知識だけではなく、情緒・感受性・共感力などを含む総合的な人間力が必要だと述べているように思った。
(以上)